あなたが、幸せであるように

 
 浩次が和美の弟になったのは、浩次がちょうど四歳になったときだった。
 大学進学をこの春に控えた浩次は、私物のなくなった自室を見渡した。引越し業者は今しがた荷物を積んで、行ってしまった。
「思ってたより広かったんだな」
 南にある大きめの窓が、光と風を取り込んでくれる。部屋にあるのは机と椅子と棚だけで、六畳のフローリングがやけに広く感じられる。ここで十五年間過ごしてきた。なんとなく寂しさが込み上げてくる。風の中にかすかに菜の花の香りを感じた。
 浩次の両親は、浩次が四歳になる一ヶ月前に交通事故で亡くなった。親戚同士の話し合いの結果、伯父と伯母が引き取ることになった。浩次自身その辺のところは全く憶えていない。だが、四歳の誕生日に和美が『今日からわたしが、こうじのお姉ちゃんなんだよ』と笑ったことだけは憶えている。浩次の一番古い記憶だ。
 それから十五年。浩次は明日、この家を出て行く。もうここで生活することはない。
 伯父と伯母は、和美と同じように、分け隔てなく愛情を注いでくれたと、浩次は思っている。だが、浩次にとって伯父と伯母は、やはり伯父と伯母であった。ただ、和美だけは不思議と従姉弟ではなく、実の姉のように思えた。
 伯父と伯母は共働きで、何かと留守にすることが多かった。だから幼い浩次の面倒は和美が見てくれた。小学校の入学式、学校まで和美が手を繋いでいてくれた。デパートで迷子になったとき、見つけてくれたのも和美だった。和美はいつも浩次のことを気にかけてくれていた。
 料理を仕込まれたのは、浩次が中学一年のときだ。ある日突然、和美が『来年からは私が作って上げられないんだから、今から教えておくの』と言って、半ば無理矢理包丁を持たせられた。慣れてくると、和美と料理をするのは楽しかった。和美の言葉の意味が分かったのは、和美が県外の大学に進学したときだった。それから台所に立つことが多くなったが、しばらくはなんとなく淋しかった。和美が帰ってきたときに食べられる手料理は、浩次のささやかな楽しみになった。
 浩次が高校に受かったときは、家族全員が祝ってくれた。特に、和美の喜び様はまるで自分が受かったかのようだった。先日大学に受かったときには、「さすが浩次よ」と納得しきりだった。合格祝いに、腕時計をくれた。
 その和美が、この春結婚する。大学時代から付き合っていた男性で、高校の教員だそうだ。名前は正志と言った。二人はすでにこの街で暮らし始めていた。
 和美からもらった腕時計を右手でいじりながら、浩次は溜め息を吐く。和美も結婚するし、ここを出て行くにはちょうどいいときだ。もうここで何かをすることなどないのだから。ただ明日を待てばいい。
 ドアをノックする音が聞こえて、浩次はドアを開けた。
「あれ? 伯父さん」
 平日の昼間、伯父の和雅は勤務中のはずだった。
「引越しを手伝おうと思って、午後から休みを取ってきたんだが、もう終わったのか?」
「はい。今さっき終わったところです」
「そうか」
 和雅はしばらく何も言わないでいた。
「伯父さん?」
「ああ。何も問題はなかったか?」
「ええ。大丈夫です。どうかしたんですか?」
 ここ最近、和雅が何かと関わってくる。心配してくれていると浩次は思うのだが、それがどことなくギクシャクしていた。以前はそういう不自然さはなかった。
 一瞬の間のあと、和雅は口を開いた。
「ならいいんだ」
 和雅はそのまま部屋をあとにした。
「何だったんだ?」
 いつもの和雅はもっと毅然とした、落ち着きのある人だ。やはりどこか様子がおかしい。
 首をかしげていると机の携帯が鳴った。和美の婚約者の正志からだ。
「もしもし?」
『浩次君? 正志です』
「何でしょうか?」
『いや、明日発つって聞いて、その前にちゃんと話をしておきたいと思ってね。今、大丈夫かい?』
 何だって話をする必要があるのか理解できない。この時期は式の準備で忙しいんじゃないのか? 和美はそう言っていた。
「ええ。大丈夫ですよ」
『じゃあ、ちょっと出てきてくれないかな?』
「いいですよ」
 待ち合わせの場所と時間を決めて、携帯を切った。
 出かけるとき居間を覗くと、和雅がテーブルの席に座ってお茶を飲んでいた。
「ちょっと正志さんが会いたいと言うので、出かけてきます」
 和雅が少しだけ頷く。
「気をつけて行きなさい」
「はい。行ってきます」
 浩次には、伯父がどこか淋しげに、しょんぼりと肩を落としているように見えた。

 約束の喫茶店にはすで正志の姿があった。テーブルにはコーヒーが置かれている。
「こんにちは」
「わざわざ来てもらって悪いね。引越しはもういいのかい?」
「ええ、もう終わりました。あとは向こうに行くだけです」
 浩次は腰を落ち着かせる。店内にあまり客はおらず、静かだ。
「とりあえず何か頼もうか」
 浩次はコーヒーを注文しようとしたが、種類が多くてと困ってしまった。悩んでいると「ここはコーヒーが美味いんだ」と正志が教えてくれた。メニューの中から、無難そうなオリジナルブレンドを注文する。
「俺なんかと話してて、式の準備はいいんですか?」
「それはこれからあるんだけど、少し時間あったからね。浩次君とはちゃんと話したことがなかっただろ? 和美が君のことを良く話すからね。ちゃんと話してみたいなと思ったんだよ。今日を逃すといつになるかわからないからね」
 正志が親しげに笑う。好感の持てる笑顔だった。
「迷惑じゃなかった?」
「そんなことは」
 ここまで来させておいて、そういうことを聞かなくてもいいだろうに、と思わないでもない。
「でもこれから大学でしょう? うらやましいよ」
「そうですか?」
「まだ実感が湧かないだろうけど、やろうと思えば何だってやれるんだから。反対に、だらだらして何もしない人もいるんだけどさ。浩次君は何かしたいことがあるの?」
「とりあえず、バイトしてお金を稼がないと」
「バイトもいろいろしてみるといいよ。金が入ると、旅行とか美味しいものを食べに行ったりできるしね」
 家庭教師、コンビニ、飲食店、と指折り自分のしてきたバイトを楽しそうに正志が語り始める。
 そういうことじゃないんだけどな。
 浩次は正志の言葉を適当に聞き流す。
 浩次は、伯父夫婦の仕送りなしで、学費と生活費もバイトと奨学金でやっていくつもりだった。これ以上、世話になるわけにはいかない。昔からそう決めていた。
 男性店員がコーヒーを持ってきたところで、正志の話が中断する。ちょうど良かったので、浩次は話題を変えた。
「正志さんは大学で姉と出会ったんですよね?」
「まぁ、ね」
 正志が少し恥ずかしそう、言葉を濁す。
「どんなふうに付き合いだしたんですか?」
 少しくらい困らせるのも悪くない。
「えーと……」
 正志はしばらく考え込んで、意を決めたように口を開いた。
「恥ずかしいんだけど、最初は俺の一目惚れだね。俺たちは同じサークルで、そこで出会ったんだ。彼女が俺の名前を呼ぶんだよ。それにすっごくドキドキしたんだ。何言われるんだろうって。例えが変なんだけど、よく言葉に棘があるとか、言葉のナイフなんて表現があるけど、あんなもんじゃないの。拳銃で打ち抜かれるみたいなんだよ。俺目掛けて真っ直ぐ、音速でさ。いや、ほんと。彼女が俺の名前を呼ぶだけで、バキューンってなんの。それで全身の血がかーってなるんだよ。脈は速いし、心臓もバクバクいってるんだよ」
 正志の顔が赤くなっている。
 恋は盲目とはよく言ったものだ。今は相思相愛なんだろうけど、姉さんに一目惚れね。
 浩次は思わず苦笑いして、コーヒーを飲んだ。少し苦い。
 正志の話は続く。
「それで俺から告白して付き合うようになったんだけど、彼女は俺のことを『正志君』って呼ぶんだ。付き合いだした頃は、彼女が『ま』って言っただけで反応しちゃう俺がいるんだよ。そうそう。浩次君も知ってるだろうけど、くしゃみなんか、くしゅんって可愛いんだよ」
「ああ、姉は、まぁ、そうですね」
 確かに和美のくしゃみは、他人がするのと違う。可愛らしいといえばそうなのだが――それにしても、この人って、こういう顔をするんだ。もっと落ち着いた人だと思ってた。
 正志が恥ずかしさの中に、少年のようなあどけない表情を浮かべていて、浩次は少し驚いた。
 と、そこで正志が息を吐いた。表情が難しくなる。
「本当は、こんな話をしたいんじゃないんだ」
「え?」
「率直に聞くけど、浩次君は俺たちの結婚をどう思ってる?」
 一瞬言葉が出なかった。
「浩次君は反対はしてないけど、賛成もしてないって和美が言ってたんだ。俺もそう思う。それで、もし俺が原因ならと思って、ああいう話をしたんだけどね。和美も俺も、浩次君に祝福して欲しいんだ」
 心を見透かされた気がした。確かに浩次は、和美の結婚を心から祝福できていなかった。反対でも賛成でも興味がないわけでもない。正志に不満があるわけでもない。むしろ和美にふさわしいと思う。
「もう行かないといけないから。悩ませるようなことを言って悪いと思ってる。でも、和美が、浩次君にはどうしても祝福して欲しいって。それは俺も同じだからさ」
 正志が伝票を持って、席を立つ。
 浩次は何も言えなかった。ただ胸が苦しかった。残りのコーヒーを一気の飲み干す。酸味がきつかった。

 夕食は正志に言われたことが引っかかって、喉を通らなかった。
「浩次。本当に仕送りはいいの?」
 食事の席で、伯母の美智子が心配そうに言ってきた。
「はい。これからは一人でやっていこうと思います。伯父さんと伯母さんには、ここまで育てていただいて、ありがとうございました」
 浩次は深々と頭を下げた。美智子が和雅を見る。和雅は珍しく食事よりも日本酒が進んでいた。
「飲んでみるか?」
 日本酒の注がれたコップを突き出されて、浩次は一瞬、意味が分からなかった。これまで和雅は、決して浩次に酒を勧めたことも、飲ませたこともなかった。
「どうかしたんですか?」
「いいから」
 半ば強引に勧めてくる。明らかに和雅の様子がおかしい。決して怒っているというわけではないのだが。
「まだ未成年ですよ、伯父さん」
 アルコールを舐めたことがないわけではないが、浩次もこの妙な不自然さにコップを受け取れない。
「そうか」
 和雅が出したコップを引っ込めて、深く息を吐いた。どこか淋しげに見えた。いつもと違う雰囲気に浩次は、どこか悪いことをしたと思いながら、箸を置いた。
 浩次は部屋に戻ると、椅子に座って、正志に言われたことを考える。別に和美が取られることが嫌であるとか、そういうことではない。祝福できないのはむしろもっと別の理由のような気がしてならない。それこそ、自分自身に関わるような――。
 ドアをノックする音が聞こえて、浩次は思考を中断する。「はい」と返事をするとドアが開く。和雅が立っていた。
「浩次、ちょっとみんなで桜でも見に行かないか? 和美も正志君も呼んであるんだ」
 家から歩いてすぐのところに、桜並木がある。ちょうど今が見ごろなのである。携帯で時間を確認すると、まだ八時を過ぎたばかりだった。浩次にとって、正志と会うのは少しばかり気が重かったが、このところの和雅の様子も気になる。
「そうですね。行きましょうか」
 立ち上がると、和雅が大きく頷くのが見えた。

 川の両岸をなぞるように桜並木の歩道が長く続く。街灯に照らされて桜はちらちらと舞う。ほのかに桜の香りが漂っているようだ。高く空を見上げると、雲はなく、月が明るくちょうど天上に上っていた。隣の道路を、一台の自動車がゆったりと通り過ぎていく。見渡せば、何人かの花見客があるいているだけで、静かな晩だった。
 浩次は独りぼんやり歩いていた。時々は桜を見上げて、時々は和美の結婚のことを考え、時々は和雅と美智子のことを考える。和美はきっと正志と幸せな結婚生活を送るだろうし、和雅と美智子はあの家で孫を可愛がるのだ。別にそこに自分がいることはない。
 気がつくと浩次は、独りでかなりの先頭を歩いていた。すでに半分以上来ている。仕方なく、その辺のベンチに腰掛けて、残りの四人を待つことにした。
「そういえば、大学生になるんだっけ。忘れてたな」
 浩次は、ふと気がついて独り苦笑いを浮かべる。
 和美は結婚する。自分自身もこれを機に伯父と伯母の世話にはならないと決めた。引越し先も自分で決めて、引越しもあとは自分が行くだけだ。学費はバイトと奨学金でどうにかなる。自炊も問題ない。足りないものは向こうでゆっくり買えばいい。
「浩次、どうかしたの?」
 顔を上げると和美がすぐそこまで来ていた。
「いや、みんなを待ってたんだけど。正志さんは?」
「後ろにおいてきちゃった」
 そう笑って、隣に和美が座った。
「いいの?」
「すぐ追いつくわよ。それよりちゃんと準備は出来てるの?」
「まぁね。足りないものがあったら、向こうで買い足せば問題ないよ」
「あんたのことだから、そんなに心配してないけど」
 目の前の桜が散っていく。何か淋しい。
「私は結婚するけど、浩次はずっと私の弟なんだからね。いい?」
 和美が浩次の肩に体を預けてくる。
「帰ってくるときは連絡しなさい。会いに行ってあげるから」
「うん」
 浩次は頷く。少し心が軽くなった気がした。しばらくそのまま肩を貸す。その重さがなんとなく気持ちよかった。
「そろそろ来たみたいだから」
 薄明かりの中で、正志の姿が見えた。和美は立ち上がると同時に、くしゅんとくしゃみをした。
 正志が和美のくしゃみを可愛いと言っていたのを思い出して、笑った。
「姉さん、ありがとう」
 街灯の下で、桜が舞い、和美は微笑む。
「話は?」
 正志が和美に近寄って尋ねると、和美が大きく頷いた。浩次はなんとなくどういうことが分かった。心のもやがなんとなく晴れた気がした。
「正志さん。姉を幸せにしてください。お願いします」
 素直に頭を下げることができた。和美は恥ずかしそうに笑い、正志は一瞬驚いたが、はっきり言った。
「はい。幸せにします」
 その言葉が浩次には頼もしく聞こえた。
「父さんと母さんがもう少し後ろみたいだから、よろしくね」
「分かった」
 桜並木の下を肩を並べて歩く和美と正志を見て、浩次は嬉しくなるのを感じた。
 程なく和雅と美智子がやって来た。
「綺麗ですね……」
「そうね」
 立ち止まって美智子が答える。風が吹くと桜が舞い上がった。
「おっと!」
 浩次に歩み寄ろうとして和雅がよろめく。浩次は慌てて立ち上がって、体を支えた。
「大丈夫ですか?」
「ちょっとまだ酔いが醒めてないようだな」
「少し休みましょうか?」
「そうしよう」
 浩次は和雅を近くのベンチに座らせた。その隣に美智子が座る。仕方なく浩次は立っていることにする。
「こうやって、皆でここを歩いたのは初めてだな」
 まるでそこに独りでいるかのように、和雅が口にした。その目は浩次を見ず、後ろにある桜に向けられているようだ。
「もっと早くから来てれば良かったな」
「そうですね」
 とは言ったものの、浩次にはその言葉の意味がよく分からなかった。
「いよいよ明日ね」
 美智子が淋しそうな顔をする。
「はい。伯父さんと伯母さんには本当に感謝しています」
 浩次は改めて、頭を下げた。
「浩次は手が掛かるような子どもじゃなかったわ。これは和美が面倒見てくれたおかげね」
 美智子が穏やかに笑う。浩次にはそれがどうしても淋しく見える。
「和美とお前を見ていると本当の姉弟のようだったな。それに比べて、私たちときたら、仕事ばかりでお前の父親にも、母親にもなれなかったな」
 溜め息を吐くように、和雅が言った。
 浩次は、そんなことはないです、と否定したかったが言葉が出なかった。
「結局、伯父と伯母でしかなかったんだろうな。私たちにいつも敬語で話すのは、そのせいなんだろうな」
 ああ、だからか。そういうことか。
 浩次は唐突に、自分の中の引っかかりが何だったのかを理解した。自分も同じだ。和美の弟になれても、息子になれなかった。和美のいないあの家は居づらい。だから、和美の結婚を心から祝福できないでいた。弟でなくなるようで――。
「私は和美が結婚するから、なんとなく浩次がこのまま帰ってこないような気がするのよ……」
 見透かされていた。浩次は余程のことでもない限り、ここへは帰らないでおこう。そう思っていた。
 美智子の目の端は光っていた。
 街灯に照らされる和雅と美智子をじっと見つめる。二人とも目が赤く充血していた。髪は白髪が増え、顔には幾重にもしわが刻まれていた。
 こんなにも年老いていたことにも、気がついていなかったのか?
 胸が締め付けられる。
「お前の人生だ。好きに生きなさい。私も、美智子も、和美も、お前の幸せを願っているから」
 思い返せば、和雅の様子がおかしかったのは、きっかけを探していたのだろう。
「伯父さん、伯母さん。俺は二人の息子にはなれなかったんだと思います」
 浩次にとって、二人は伯父と伯母であることはかわりない。
「でも二人の子どもには、なれたと思います。伯父さんも伯母さんも父親でも母親でもないかもしれないけど、俺の親ですよ」
 言葉が自然と出た。胸に熱いものが込み上げてくる。
「いつでも帰ってらっしゃい。あそこはお前の家だから。これからも、何があっても」
「はい」
 美智子の言葉に浩次は大きく頷いた。
「私たちはもう少し桜を見ているから、先に帰りなさい」
「はい」
 すがすがしい気分だった。背を向けて歩き出そうとする。と、そこで思い出したことがあって、浩次は振り返った。
「伯父さん。お酒は、あと二年経ったら、一緒に飲みましょう。伯父さんさえ良ければ、今度帰ってくるときでもいいんですけど」
「あと二年待ちなさい」
 和雅が笑う。浩次も笑った。
 浩次はこれ以上ない気分で、ゆっくり桜並木を歩いた。
 来年もまたここを家族皆で歩きたい――そう思いながら。

 皆が見送りに来てくれた。正志までも。
「行ってきます」
 さよならを言おう思っていた自分が恥ずかしい。
「ちゃんと自炊するのよ」
 和美はこんなときまで姉だった。
「困ったことがあれば、いつでも言いなさい」
「はい」
 浩次は和雅の言葉に大きく頷けた。
 新幹線のドアが閉まり、出発のアナウンスが流れる。窓の向こう側で、和美も正志も美智子も手を振った。浩次もそれに答えて手を振る。和雅は深く頷いていた。
 再会は和美と正志の結婚式だろうか? こんなにも待ち遠しいなんて思ってなかった。
 新幹線が動き出す。駅のホームを抜けると、車窓から風に舞い上がる桜が浩次の目に映った。

"あなたが、幸せであるように"――end

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